パラスポーツスタートガイド

パラスポーツほっとインタビュー 宮田夏実選手(デフサッカー)株式会社MCCマネジメント/一般社団法人日本ろう者サッカー協会所属/リガーレヴィア葛飾所属

デフサッカーが
夢と希望をもたらしてくれた
好奇心を持ってチャレンジしてほしい
チャレンジによって世界が広がる

――サッカーは「後ろの声は神の声」と言われるくらい、プレー中の声かけが重要です。生まれながらにして聴覚に障害のある宮田夏実選手は、聞こえないながらも聞こえる人とともにプレーを続け、デフサッカー、デフフットサルの両種目の日本代表としても活躍しています。「デフサッカーと出会って人生が変わった」という宮田選手に話を伺いました。

2024年3月21日公開

デフサッカーとの出会い

5つ年が離れた兄の影響で小学生の時にサッカーを始めました。デフサッカーに出会ったのは中学生になってからです。私と同じで耳の聞こえない兄がデフサッカーをやっていて、合宿を見に行った時に、たまたま同じ場所で女子も合宿をしていて、そこで声をかけてもらいました。

デフサッカーと出会うまでの私は、周りに聾(ろう)の人もいなかったので「なぜ私だけ聞こえないのだろう、私はこの先どんな大人になればいいのだろう。」と不安に思っていました。でもデフサッカーと出会って、前向きに頑張っているお姉さんたちの姿を見て、私もこんなふうに前向きでイキイキとした大人になりたいと思うようになりました。

中学3年生の時、トルコで行われたデフサッカーワールドカップに初めて出場しました。その閉会式の時に、世界には私と同じように聞こえない人がこんなにもいるということに衝撃を受けて、「聞こえないのは私だけではない」と心強く感じました。デフサッカーは私に夢と希望をもたらしました。サッカーを通じて友達の輪も広がって、自分の世界も広がっていきました。

日本ろう者サッカー協会

アジア太平洋ろう者フットサル選手権大会 対中国戦でドリブルを仕掛ける宮田選手

デフサッカー、
デフフットサルの魅力

私はデフサッカーもデフフットサルも、表現する場だと思っています。サッカーはコミュニケーションスポーツなので、ピッチ上に聞こえない私がいると、連係プレーがうまくいかないことが多々あります。でも、指でサインを出したり、日頃からコミュニケーションを取ったり、より周囲を見るようにしたり工夫をしています。

そうして連係プレーがうまくいったり、ゴールが決まったりした瞬間は、何物にも代えがたい喜びがあります。「私はこの瞬間のためにサッカーをやっている」と思えて、生きていることを実感します。それがフットボールに魅せられた理由の一つで、デフの場合は、その喜びをより感じることができます。

私はメンタルが弱いので一人だと頑張れません(笑)。でも、みんなと一緒に同じ目標に向かって頑張っていくことにやり甲斐を感じるし、みんながいるから頑張れます。試合で勝ったり、ゴールを決めたりした時に、みんなで喜べるのもチームスポーツの魅力だと思います。

チャレンジ精神の源

中学時代、サッカー部では男子と一緒に練習していました。走るのが大変で、ついていくのに精一杯でしたが、そのおかげで体力には自信があります。もっとうまくなりたいと思って、高校は女子サッカー部のある学校に進学しました。この高校時代がターニングポイントだったと思っています。

中学までの私は、耳が聞こえないから通訳してもらうのが申し訳ないなと思っていました。でも、高校に入ってからはみんながフレンドリーに接してくれて、聴覚障害者の宮田夏実ではなく、一人の仲間として見てくれることがすごく嬉しかったです。障害のある人だから特別なのではなく、誰でも助け合うというスタンスが心地よく、お互いのチャレンジを応援しあえる環境だったから、「こんな私でもチャレンジしていいんだ」と思うことができました。

チャレンジすれば失敗することもあります。でも、失敗したからこそ見える景色もあるということを知ったし、周りの方のおかげで、自分が聴覚障害者であることを意識することが圧倒的に減りました。私は聞こえないだけで、走ることもできるし、勉強することもできるし、できることがいっぱいある。そう思ってチャレンジできるようになりました。

日本ろう者サッカー協会

アジア太平洋ろう者フットサル選手権大会での日本代表チーム 前列右から3番目が宮田選手

デフリンピックに向けて

フットサルは2024年3月開催の冬季デフリンピック(トルコ)に正式種目として採用されることになったので、これまで以上に注目されると思います。たくさんの人に興味を持ってもらえるように、デフリンピックでもタイトルを獲りたいです。

2025年には東京で夏季デフリンピックが開催されます。デフリンピックが日本で開催されるなんて夢にも思っていなかったので、嬉しい気持ちでいっぱいです。私たちのプレーを通して、誰かの頑張るきっかけになったり、夢や希望を届けることができるように、練習で自分を磨いていきたいです。サッカーとフットサルをできる時間は限られているので、一日、一日を大切にこれからも頑張っていきます。

パラスポーツを
始めてみたい方へ

何か一歩踏み出すのはすごく勇気が必要ですが、好奇心を持ってチャレンジしてほしいなと思います。私は好奇心を持ってチャレンジしたからこそ、見える景色や世界が広がっていきました。それと同時に多少のことでくよくよ悩むこともなくなりました。

私は幸運なことにいろいろなチャレンジを後押ししてくれる環境があり、サポートしてくれる人がいて、恵まれた環境でした。だから、パラスポーツを始めてみたいという方をサポートする側も、「無理だ」とか「ダメだ」と最初から否定するのではなく、チャレンジを後押しして欲しいなと思います。

宮田夏実選手
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