パラスポーツスタートガイド

パラスポーツほっとインタビュー 森宏明選手(ノルディックスキー)朝日新聞社 スポーツ事業部/HOKKAIDO ADAPTIVE SPORTS所属

何かを始めるときは勇気が必要です。
「できない」と決めつけずに
一歩踏み出すと、
自分の適性を
見つけられるかもしれません。

――森宏明選手は野球に打ち込んでいた高校2年の夏に交通事故に巻き込まれ、両脚の膝から下を失いましたが、リハビリの後、義足をつけてグラウンドに戻った強い心の持ち主です。そして2017年から始めたパラノルディックスキーで、北京2022パラリンピックに出場。常に明るく前向きにチャレンジを続ける森選手に、お話をうかがいました。

2023年1月12日公開

パラスポーツを
始めたきっかけ

2013年8月に受傷して入院しているときに、東京2020大会の開催が決まって、そのニュースを病室で見ていました。自分はずっとスポーツをやってきましたし、東京出身なので、競技をやるかどうかは別として、この大会に関わりたいという思いはありました。そうしたときにJPC主催の選手発掘事業に参加したことが、パラスポーツを始めたきっかけです。最初はアイスホッケーから声がかかって、代表の強化合宿に何度か参加させてもらいました。しかし、大学受験があったり、練習拠点の長野まで行く難しさがあったり、タイミングが合わずに、このときは本格的に競技に取り組むことはできませんでした。

パラノルディックスキーとの
出会い

2017年、大学3年の夏、周りは就活モードに入っていく時期にパラノルディックスキーの荒井秀樹日本代表監督と出会って、本格的に競技に取り組むことになりました。元々、雪に馴染みがあったわけではなく、スキーという競技への不安もありましたが、タイミング的にこれがラストチャンスだと思って決断しました。

スキーの魅力は自然の中、幻想的な景色の中で滑ることです。義足になってからは転倒の恐れなどもあり、雪に恐怖心があって避けていましたが、スキーを始めたことでそれがなくなって、日常生活の中でできることも増えました。また、個人競技なので、自分との向き合い方が大きく変わりました。

北京2022パラリンピックを
経験して

競技を始めたのが、ちょうど平昌2018大会シーズンのときだったので、4年間パラリンピックをイメージしながら、日々鍛錬していくモチベーションにしていました。目指してきたパラリンピックはどんな舞台なのか? それを自分で確認しに行くという思いがあって臨んだのが今大会です。初めてのパラリンピックで、レース自体は他の国際大会よりも緊張感があって、ワクワクしました。実際に自分の目で見て、体で感じて、思ったことは、「ただ出るだけではダメだ」ということ。もっと競技力を上げていって、さらに上を目指したい気持ちが大きくなりました。
一方で、パラリンピックはお祭り的なイメージを持っていましたが、コロナの問題に加えて、ロシアのウクライナ侵攻問題があって、現地では国際社会の問題をすごく感じました。

新たなチャレンジを
スタート

北京パラリンピックを経て、自分の中の課題も見えてきて、違うことを試す時期に差し掛かっていると思います。今までは上半身の筋力や持久力を重視して鍛えていましたが、全身の力が必要な種目であり、下半身の筋力も向上させていかないといけません。そこで、他種目の競技の動きを取り入れたくて、クロストレーニングに取り組もうと考え陸上競技を始めました。下半身の強化が狙いなので、スキーと同じ座位のクラスではなく、陸上用義足をはいて立位のクラスで走ります。少し不思議な二刀流です。先日、初めて出場した陸上の大会では思うようには走れませんでしたが、これからもっと頑張っていきたいと思います。

パラリンピックに出場して、いろいろな方に応援していただいたり、祝福していただいたりして、「自分だけの挑戦ではない」という気持ちが大きくなりました。自分がメダルを獲りたいから頑張るというだけでなく、社会への影響、周囲の方への感謝、そういうことも含めて、頑張っていきたいです。あとは何かにチャレンジする、その過程が純粋に楽しいです。

パラスポーツを
始めてみたい方へ

何をやるにしても始めるときが、一番勇気が必要になります。また、始める前に「できない」と決めつけないことも大事だと思います。自分の場合も東京に住んでいるので、冬の競技には縁がないと勝手に思っていたのですが、始めてみたら意外とやれました。だから、自分にはできないと決めつけず、勇気を出してコンフォートゾーン(居心地の良い状態)を抜け出してみると、自分でも思ってもみなかった適性を見つけられるかもしれません。

そして、サポートする方の後押しもすごく大事です。新しいことに挑戦するのは誰でも不安があります。自分も陸上競技にチャレンジするときに、背中を押してくれる方々がいたことで、一歩踏み出すことができました。周りに何かを始めたいけど…と悩んでいる方がいたら、ぜひ勇気が出るように背中を押してあげてほしいです。

自分は今まで事故の経験を伏せてきたところがありました。でも今は他の人にはないこの経験を伝えていくべきではないかと考えています。これからは競技をやりつつ、障害のある子どもたちにも、障害のない子どもたちにも、自分の経験を「こういう経験があって、こういうことを考えて、こういうことをして、今はこういう人生を歩んでいる」と伝えていくことが、一つの使命かなと思っています。

S&S TOKYO 障スポ&サポート
東京パラくる
TOKYOパラスポーツ・ナビ
東京都パラスポーツトレーニングセンター
TOKYOパラスポーツチャンネル
東京都パラスポーツ次世代選手発掘プログラム
都立特別支援学校活用促進事業
東京都生活文化スポーツ局
スポーツTOKYOインフォメーション
チャレスポ!TOKYO