スポーツは障害のある人、ない人という
垣根を越えて楽しめるのが魅力です。
卓球を続ける一番の理由は
「楽しい」から!
———舟山真弘選手は4歳の時に「右上腕骨 骨肉腫」に罹患。右腕の肩関節と上腕骨を切除し、足の細い骨を移植する手術を受けました。右腕に障害を抱えることになったものの、小学5年生から始めた卓球ではメキメキと成長し、昨年は国際クラス別パラ卓球選手権大会で優勝、パラの大会だけでなく今年の夏はインターハイにも出場を果たしました。パラ卓球の期待の星として注目を集める舟山選手に、これまでのことやこれからのこと、パラスポーツの魅力について語ってもらいました。
2022年12月1日公開
卓球との出会い
小学5年生の夏に遊びの一環で、週に1回の卓球教室に通い始めたのが最初でした。自分は障害があって、激しいスポーツになると「危ないから」と制限される部分が多いなかで、卓球は人と接触することがないので制限される部分が少なく、すごく楽しかったです。現在も所属している卓球クラブ親久会の練習に何度か参加させてもらったときに、当時パラ卓球の日本代表だった金子和也さんとお会いして、パラリンピックの話を聞いたことが「本気で卓球を頑張ろう」と思ったきっかけです。早い段階でそういう世界に気づかせてもらったのはありがたかったです。
パラ卓球の面白さ、難しさ
パラ卓球は障害の種類や度合いによって11のクラス※に分かれています。とくに障害が重いクラスになると、相手の弱点を狙う傾向は強くなると思います。パラ卓球の選手は障害によって、どういう動きがしづらい、どのコースが苦手などの弱点があります。その弱点を本人がよく理解していて、その分それを補うためにすごく研究もしています。実際、試合のときに自分が「この選手はこういう障害だからここが弱点だろう」と仮説を立ててプレーしても、相手は狙われるだろうと予想して補っているから、逆にそこが強くて驚かされることもあります。自分の場合はバックがあまり得意ではないのですが、足は障害のない人と変わらず動くので、たとえば普通ならバックで打つボールを、フットワークで回り込んでフォアで打つというやり方をしています。そうやって弱点を補うために長所を伸ばすのもパラ卓球の特徴かもしれません。
パラ卓球の選手は同じクラスでも、持っている障害や障害に至ったバックグラウンドが違ったり、同じ障害でも使える可動域が違ったり、一人ひとりがまったく違う特徴を持ってプレーしています。ノーマルではない打ち方をする選手もいて、「こうやって打つんだ」「そこをそんな打ち方をするんだ」という技術は、選手としては学びになります。一人ひとりの選手にフォーカスして見ると、いろいろな見え方があってすごく面白いと思います。
※パラリンピックの卓球の障害クラスは、車いす・立位は各5クラス、知的障害は1クラスの計11クラス。障害の部位ではなく障害の重さでクラス分けされているため、立位の場合、同じクラスに上肢障害・下肢障害の選手が混在している。
障害のない選手と
一緒にプレーすること
自分は障害が軽いこともあって、小学生の頃から障害のない人たちと練習も試合もしているので、あまり区別して考えていません。来年から早稲田大学に進学予定ですが、先輩方はみんな強いですし、技術に関しては障害のない方から学べることはたくさんあります。関東の大学には全国の強豪校から選手が集まってきていて、すごくハイレベルです。そういう高いレベルで勝つことができれば、純粋に強くなるという部分で、必然的にパラでも勝てるようになると思っています。 右腕を固定できる装具を着用していますが、装具をつけてのプレーでは、横に振られてバランスを崩すと、どうしても戻るのが難しい。だから、バランスを崩されない練習、バランスが悪くても、できる限り障害のない選手と同じように動けるように意識して練習しています。
パラリンピックへの思い
一番近い目標は2年後のパリ2024パラリンピックに出場することです。2023年の1月からパラリンピックの選考期間が始まり、ポイントを獲得するためには多くの国際大会に出なければいけません。大学の大会と並行して出ることになりますが、出場権を獲れるように頑張りたいです。パラリンピックへの出場が決まれば、金メダルを獲ることを目標にしたいです。選手としての一番の目標はパラリンピックで金メダルを獲ることなので、パリ、その後はロサンゼルスと続いていくなかで、目標を叶えたいです。
パラスポーツを
始めてみたい方へ
自分が卓球を続けていられるのは、「楽しい」というのが一番大きな部分です。練習はすごくきついし、試合で負けると精神的にネガティブになることもありますが、卓球をやめたいと思ったことは一度もありません。スポーツは障害のある人、ない人という垣根を越えて、楽しめることが魅力です。パラ卓球は障害のない選手と練習をすることも多いですし、障害の重い方でも障害のない選手と練習をしています。他にも障害のある人とない人が一緒にやるスポーツはたくさんあります。だからあまり「パラだから」ということは考えずに、チャレンジしてほしいです。純粋にスポーツを楽しむ、もっとうまくなりたいという気持ちが、自分をここまで成長させてくれたと思っています。