パラスポーツスタートガイド

スポーツが、
僕に自信と居場所をくれた。
練習を積み重ねて、結果が出るように
巡り会いを積み重ねて、今の僕がある。

———「髙田です、よろしくお願いします」。まっすぐに相手の目を見つめ、ハキハキとした言葉で挨拶をする髙田選手。聴覚障害者のオリンピック「デフリンピック競技大会」を2022年5月に控えた髙田選手に、陸上競技との出会いから今後の目標について、お話を伺いました。

2022年3月31日公開

スポーツを始めたきっかけ

子どもの頃は引っ込み思案で、自分にあまり自信がなかった。そんな僕を心配した母が「外で遊んできなさい」と、なかば強制的に家から追い出したんです。ろう学校に通っていたから、近所に友人はひとりもいない。困ったけれど、しかたなく「仲間に入れて」と遊んでいる子たちに声をかけた。僕は聴覚障害者で耳が聞こえませんが、見た目だけではわからない。最初は「耳に変なの入れてる」「ちゃんと聞いてるの」というところからのスタートでした。でも当時の外遊びと言えば、鬼ごっこやかけっこがメインです。一緒に遊んでいるうちに「お前、足が速いな」となる。そうすると、次に遊ぶ時は率先して誘ってくれる。体を動かす楽しさ、誰かと遊ぶ楽しさを知り、自分にも自信がついてそこからスポーツに興味をもちました

陸上競技との出会い

中学・高校は野球に打ち込みましたが、肩にケガをしてしまったんです。一時はプロを目指すほど力を入れていたので、心にぽっかりと大きな穴があいたような気持ちになりました。でも、スポーツは僕に、輝ける居場所を作ってくれた。大学に進学してから、未経験でも挑戦できるスポーツはないかと考えた時、陸上競技が思い浮かんだんです。僕は足が速かったから、実は高校時代に助っ人として駅伝に出たこともあり、いけるんじゃないかと。そこで、陸上部の監督に頼んで自分の走りを見てもらったら「短距離向きだ」と言われて。そこから本格的に、陸上競技に取り組むようになりました。

障害者の競技大会が
あることを知って

大学時代に出場した日本学生陸上競技対校選手権大会で、聴覚障害に詳しい方から声をかけられました。NHKの手話ニュース845のキャスタ−・板鼻 英二いたはな えいじさんです。板鼻さんは僕が補聴器をつけていることに気づいて「聴覚障害にも陸上の大会がある」と教えてくれました。僕はそれまで、全国障害者スポーツ大会やパラリンピック、デフリンピックなど、障害者の競技大会があることを知らなかった。板鼻さんと出会いがあったから、今の僕がある。板鼻さんとはその後も手話を教わるなど親しくさせてもらっていて、本当にお世話になっています。

国際的な大会への挑戦

実は一度大学卒業を機に陸上競技を離れましたが、大学在学中の記録が選考対象になって、第1回の世界ろう者陸上競技選手権大会の出場に声がかかったんです。選ばれたとなると、挑戦したくなって、再び競技に取り組み始めました。そうして、アスリートとしての生活をスタートさせ2015年のアジア太平洋ろう者競技大会では銀メダル、2012年のトロント世界ろう者陸上競技選手権大会では銅メダルを手にしました。ただ、デフリンピックではまだ一度もメダルを獲得していないので、2022年開催予定の第24回夏季デフリンピック競技大会では、メダルを狙いたいと思っています。

パラスポーツを
始めてみたい方へ

僕も陸上競技を始めるまでは、自分に向いているかどうかなんてわからなかった。「やってみたい」と思ったから始める。その姿勢が大切です。今はパラスポーツに関する情報が昔よりも断然得やすくなっていて、認知も広がっています。だから、障害を「壁」だと考えないでほしい。「耳が聞こえないことで周りに迷惑をかけないように、僕が気をつけないと」と思った時もあります。でも、聞こえないものは聞こえないし、こればかりは、どう頑張っても乗り越えられません。だから、「障害があるから」ではなくて、「できないから助けを借りる」。そして、「できないからサポートする」というふうに考えたらいいんです。助けてほしいところは、手伝ってもらえばいいんです。周りで障害当事者を支えている方も、荷物をちょっと持ってあげるようなライトな感覚で「できることはない?」と声をかけてあげてほしい。次の世代のためにもバリアフリーな未来を目指して、普及活動に取り組みたいと考えています。

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