車椅子でチャレンジできる
スポーツは
ひと通り試して、
ボートにたどり着いた。
最初の一歩を踏み出すのは、
自分自身。
———鍛えられた長い腕で車椅子を操り、インタビュー会場に現れた市川選手。「今日はよろしくお願いします!」。穏やかな笑顔を浮かべる市川選手に、ボートとの出会いから東京2020パラリンピック競技大会出場、今後の目標などについてお話いただきました。
2022年2月17日公開
再びスポーツに取り組む
きっかけ
もともと体を動かすことが大好きで、夏は海が近い民宿で働きながらマリンスポーツ、冬はスキー場で働きながらウィンタースポーツと、スポーツを軸にした生活を送っていました。でも、スノーボード中にケガをして、車椅子生活に。最初の頃は、日常の動作に慣れるだけで精一杯。車椅子の生活に慣れてくると、やっぱりスポーツをしたいという思いが強くなって、東京都多摩障害者スポーツセンターに行ってみたんです。そこで東京都パラリンピック選手発掘プログラム※1のポスターを見て、軽い気持ちで参加してみました。
ボートとの出会い
東京都パラリンピック選手発掘プログラムは、パラリンピックを目指す選手の発掘が目的のイベント。最初は気軽に参加していたつもりが、いつしか「自分の体の特性がメリットになる競技は?」という視点から真剣に検討していました。私は中学生時代にバレーボールをやっていたので、身長が174cmあり、他の人より手が長いんです。腕と肩の力を使ってこぐボート競技なら、パラリンピックを目指せるのではないかと思いました。スタッフの方も熱心に教えてくれたので、一度、練習会を訪ねてみることにしたんです。
スポーツの喜びをボートで
再確認
実際にボートに乗ってみると、感覚が一変して感動しました。陸の上で車椅子に乗っていた私が、またウォータースポーツを楽しんでいる。大自然の中、水の上を自由に進めることが、とにかく本当にうれしかった。ボートは、練習での頑張りがそのまま成績に反映される競技です。個人スポーツなので自分のペースで進められるところもいいなと感じましたし、競技人口が少ないこともチャンスだと思いました。とにかくできることはやってみよう。そう思って、ボートに決めました。
東京2020パラリンピック
競技大会を経て
自分に足りないところを補うためには、何をしたらいいか。弱点を克服する練習に取り組みながら、チャンスをつかんで、東京2020パラリンピック競技大会に出場する夢を叶えました。メディアで取り上げていただいたり、古い友人から連絡があったり。自国でパラリンピックが開催される影響力は、やっぱりすごいですね。「車椅子でも元気に競技に取り組んでいる姿を見せたい」。そういう思いもあったので、振り返ると「もっとできたんじゃないかな」という気持ちもありますが、「自分なりによくやった」という達成感もあります。次のパリ大会はもちろん、出身地・愛知で開催される2026年のアジアパラ競技大会出場も大きな目標です。
パラスポーツに
興味がある人へ
インターネットで情報収集してもいいし、詳しい人に聞いてもいいので、まずは挑戦してみてほしいです。東京都が開催しているプログラム※2は、たくさんの競技が一度に試せるのでおすすめですね。私はボートを通じて、自分の新たな可能性や居場所が発掘できました。ボートのおかげで、心身ともに成長できたところがたくさんあるし、新しい世界、新しい出会いが広がった。スポーツを始める動機はいろいろあると思います。誰でも最初の一歩は踏み出せるので、何でもやってみることがスタートラインだと思います。
※1 2015年〜2018年度に実施
※2 2019年度より「パラスポーツ次世代選手 発掘プログラム」を実施中